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障害者に”はたらく”選択肢を 金沢QOL支援センターが拠点整備


訪問看護やリハビリ型デイサービス事業などを展開する金沢QOL支援センター(石川県金沢市)は、脳卒中などの疾病に伴う障害を含む身体障害者を対象とした就労支援を本格化する。昨年10月には名古屋に、今年1月には東京に専門の就労支援センター「ハリス」を開設。ここを拠点に就労に向けた教育研修から就職先の開拓、就労後の支援に向けた体制整備に乗り出した。

 「病気で障害が残るとこれまでは介護やリハビリばかりの生活になりがちでしたが、これからは“はたらく”という選択肢も提供していきたい」(岩下琢也・金沢QOL支援センター代表取締役)考えだ。

 同社は石川県で障害者のハーブ農園への就農を支援する取り組みを展開するなど、ノウハウも蓄積してきた。本業が訪問看護やデイサービスでもあり、従業員も約半数が看護師や理学療法士、作業療法士といった医療関連の資格者でもある。こうしたノウハウや人財を投入することで、障害者の就労支援に挑戦する。

 希望者に対しては、通勤を前提に健康管理のほか教育、研修を実施。それぞれに適した仕事を探すとともに就労やその後のケアも実施することにしている。

 国内に障害者は350万人以上いるとされるが、実被雇用者数は47万4000人程度。300万人以上は就労していないのが実情だ。脳卒中の場合も、治療完了後の復職率は40%程度と低い。

 しかし、実際には就労意欲がある場合も多く、一方で人口減少にともなう労働人口の減少が大きな課題となっていることから、社会的にもこうした取り組みが必要と判断した。

 同社はこの取り組みに対する利用者の拡大をめざし、ケアマネージャーやソーシャルワーカーといった専門職に従事する人らを対象にしたセミナーなども開催。障害者にも“はたらく”という選択肢があることに対する認知度向上に力を入れることにしている。


天塩、こだわり商品の普及加速 スタジオ設置、イベントも


「赤穂の天塩」などを展開する天塩(東京都新宿区)が、兵庫県赤穂市の塩作りの歴史と文化のストーリーが、認定を受けたこと を機に、こだわりのある商品の普及活動を本格化している。

 同社の主力商品は付加価値の高い塩だが、人口減少や外食・中食へのシフト、減塩志向などを背景に消費減少が続いている。これは業界全体の傾向でもあるが、同社が展開する高付加価値商品や機能性商品については市場開拓の余地も大きい。

 同社は、海水から作る塩化ナトリウム成分の少ないミネラル調味料「Five Star(ファイブスター)」を今期春より一部地域で販売開始し、秋からは全国販売を計画する。室戸の海洋深層水を原料にした付加価値の高い塩などもラインアップしているが、「これらはまだまだ説明商品でその特徴や良さを消費者にアピールしていく必要がある」(鈴木恵・天塩社長)。このため、消費者との接点を増やす施策を展開することで商品に関する認知を深めていくとともに核となるファンの拡大を目指していく。

 そのための施策として、東京都新宿区の本社ビル1階と天塩のメーカーとなる 赤穂化成(兵庫県赤穂市)の料理スタジオ「天塩スタジオ」を舞台に料理イベントなど開催し、商品の良さを訴える。また、料理教室などとの連携強化も進めていく考えだ。

 と同時に、他のメーカーとも連携。「塩むすびの日」である4月6日では、業界各社と共同で消費者向けの普及イベントを開催し、市場を盛り上げて行くことを考えている。

 一方で、天塩を使った塩分補給の為の飲料、塩あめ、塩タブレットといった熱中症対策商品、天塩を使った調味料や加工食品についても商品拡充や需要開拓の機会をうかがい、更に認知度を高めていく考えだ。


技術力生かし電子機器分野開拓 ユニオン電子まずは翻訳機


家庭用ゲーム機のコントローラーなどに強みを持つ電子機器メーカー、ユニオン電子工業(横浜市港北区)は、業容拡大に向けた多角化を本格化する。家庭用ゲーム機メーカーやゲームソフトメーカー、業務用ゲーム機メーカー向けのコントローラーなどで有数の実績を持つ同社だが、ゲーム市場の変化などに伴う周辺機器市場の減少に直面。技術力などを生かして他の電子機器分野を開拓する。

 その第一弾として、まずはポータブル型の電子翻訳機事業を立ち上げる。6月から第一弾となる商品「Perico(ペリコ)」を発売。法人向けの需要開拓を始めた。

 ペリコは電話会社が加入者を特定するためのID番号が記録されたICカード「SIMカード」とWi-Fiに対応。インターネット上のサーバーとデータをやり取りすることで38種類の言語を瞬時に翻訳することができる。

 最近ではこうした翻訳機が複数の企業から投入され、市場が形成されつつあるが、ペリコは海外などで現地の「SIMカード」を使用すればモバイルWi-Fiルーターとして使用することができる機能を搭載。国内外で外国人とのコミュニケーションが求められる法人向けの営業活動を積極化する。

 今後は「より専門的な分野の翻訳にも対応する機器の開発なども検討。そうした機器の専門分野、ジャンル別のラインアップなども模索する」(磯脇康三・ユニオン電子工業社長)考えだ。

 同社は1968年にオーディオ機器のターミナルなどの電子部品を製造する企業として創業。家庭用ゲーム機が登場した80年代半ばからはゲーム機の周辺機器を手掛けることで業容を拡大してきた。ただ、スマートフォンの普及に伴い、ゲーム機向けの周辺機器市場は縮小。新たな事業の創出に乗り出している。


“オールスター”で“グローバルスタンダード”に挑戦― 「和」テーマに日本アニメを発信


アニメ界で起きているこんな取り組みが注目されている。「ファイナルファンタジー」のキャラクターデザインで知られる天野喜孝氏をはじめ、芹沢直樹氏、古代祐三氏ら日本のマンガやゲーム、アニメを中心としたカルチャーシーンで活躍する“レジェンドクリエーター”が集結。海外に向けて「和」をテーマにコンテンツ関連の情報を発信するジビエートプロジェクト(運営・ジビエートプロジェクト製作委員会)が、その集大成となるコンテンツ第一弾となるアニメ「ジビエート」を製作する。放送開始は2020年夏の予定。

 ゲームやアニメは日本が世界に誇るコンテンツだが、近年は国内の熱狂的なファンに向けた内容のものが中心となっているのが実情で、全世界的に評価される“グローバルスタンダード”な作品が少なく、2000年以降は世界的な大ヒットが少ない。

 一方で、米国の映像制作会社からは世界的にヒットするアニメ作品などが多数登場するようになってきた。

 こうした中で、日本のアニメ界の底力を引き出し、世界的なコンテンツを製作しようと、ジビエートプロジェクト製作委員会が動き出している。

 同プロジェクトのプロデューサーを務める青木良氏によると、ジビエートは「マンガなどの原作を持たないオリジナルコンテンツで、キャラクターデザインなどのデザインには日本を代表するクリエーターを起用。音楽なども国内外で評価の高いミュージシャンにいらいが参加するなど、オールスターが製作に参加する」という。

 日本には世界的に知られるクリエーターが多数いるものの、一堂に会してコンテンツを製作し、“世界を相手に”発信するといった取り組みはこれまでなかった。

 今回はこうした日本の“オールスター”が参加し、“グローバルスタンダード”を実現するために「努力」や「友情」「勝利」といった世界共通の“要素”を盛り込んだコンテンツを製作。日本アニメの世界での存在感を賛構築する。

 プロデューサーの青木氏は今回のプロジェクトについて「アニメ界などの運命共同体を大きくする事業。第一弾は和をテーマにしているが、その後はテーマを変えながら年間一作品のペースで製作を続けていく」と話した。


空き家の案件化で街の廃墟化に・一石空き家活用が情報提供サービスを本格化


“空き家問題”が都市部も含めた日本の大きな問題となっている。2019年の調査では、全国の空き家の数は845万戸。33年にはこの数が2000万戸以上に達するとの予測もある。

 空き家対策特別措置法は施行されたものの、新築の着工数は引き続き多く、その半面で空き家は増加し続けている。それもそのはずだ。日本では人口減少が始まっており、今後は世帯数の減少も本番を迎えるにも関わらず、新築住宅の大量供給が続いている。このままの状態が続けは、空き家問題の深刻化は避けられない。

 こうした中、大阪で不動産会社を経営する和田貴充氏は、こうした社会問題をビジネスを通じて解決するための会社、その名も「空き家活用」を設立し、取り組みを本格化している。

 「われわれが空き家市場を構築するためのベースを作り、企業や行政、団体とともにこの問題を解決する事業を創出したい」(和田貴充・空き家活用代表取締役CEO)

 同社の取り組みは、空き家を洗い出し、それらを時代に合わせた形で活用していくための道筋を整える、というもの。空き家を売買物件として流通させたり、賃貸物件にしていろんな利活用を促していく。

 こうしたアイデアは以前からあるのだが、同社ではこれを実現していくために“洗い出し”の部分を大いに工夫した。

 「空き家は相続などの際に発生することが多い。オーナーにはその利活用について相談する相手もいないため、そのまま放置され続けてしまう。まずはそれらを“案件化”する必要がある。まずは潜在化している使われていない住居を探す必要がある」(同)

 同社はそのために、65歳以上のシニアを調査員として自社雇用し、空き家化している家を調査。すでに11万戸の空き家を発見し、うち3万戸程度を同社のデータベース「AKIDAS(アキダス)」に登録して“案件化”している。アキダスには、空き家の場所やオーナーの所在などの情報が収録されている。同社はこのアキダスを月額5~15万円の有料サービスとして提供。不動産会社などがオーナーと相談することで、空き家に利活用の道を開いていく。

 「空き家を案件化することで、建て直しも含め再びそこに誰かが住む可能性もでてくるし、それ以外にも物販店や飲食店、サロン、倉庫など“働く場所”などでの利活用が可能となる。地域を廃墟化しないためにも、この事業を大きく広めたい」(同)

 和田氏の挑戦に期待が集まっている。